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Writer's pictureShingo Sakamoto

「情報共有」に関する考察

いつもは、テクノロジー企業の技術や事業開発に関する調査記事を書いていますが、今回は少し趣向を変えて、「情報共有」について書いてみようと思います。


なぜ、情報共有について書こうと思ったかというと、日頃ベンチャーキャピタルファンドで活動する中で、すごくシンプルですが、情報共有がうまい人は一緒に働いていて気持ちが良い、と感じる機会が何度もあったからです。


私は以前メーカーで原価管理・設備投資の仕事をしていましたが、逆に、その時はそこまで情報共有の重要性について真剣に考えたことがありませんでした。その理由を考えてみると、大きく2つあるように思います。


  • (1)同時並行でいろんなプロジェクトに関わる機会が少なかった メーカーでは、どちらかというと、広範な人と関わるより、数値を分析する業務が多く、同時並行で複数のプロジェクトに関わる機会が限られていました。自分が関わっているプロジェクトの進捗や、誰がいまどういう状況なのかは、自分が手を伸ばせば把握できることが多く、情報を共有してもらえなくて困る、ということはほとんどありませんでした。

  • (2)出社がメインだった もう1つ、リモートワークという文化がなかったのも大きく関係していると思います。基本的に出社して働いていたので、何かわからないことがあれば、直接会いに行って質問していました。自分のチームについては、机を並べて働いていたので、だいたいどういう状況かは視覚的に把握することができました。


COVID-19が流行し始めた2020年に、社外の人と多く関わり、同時並行で複数のプロジェクトに関わる機会が多い、ベンチャーキャピタルで働き始めたことが、情報共有の重要性について改めて考えるようになったきっかけかもしれません。

(Source: https://pixabay.com/ja/photos/共有-ゲーム-単語-2482016/)




情報共有と信頼


まず、情報共有と信頼の関係性について考察してみたいと思います。


前提として、私は信頼しやすい人の方が一緒に働きやすいと思っています。では、どういう人が信頼しやすいのかというと、私にとっての定義は、各シーンで「私が予測する相手の行動」と「相手が実際に取った行動」の乖離が小さい人です。


例えば、待ち合わせをしていたAさんが10分遅刻したとします。この場合、遅刻したこと自体が問題なのではなく(もちろん間に合った方が良いとは思いますが)、そもそも「Aさんは10分遅れる可能性が高い」と私が事前に認識しておく方が、このシーンにおける予実差が小さくなります。


例えば、

  • そもそも私とAさんとは旧知の仲で、その人が遅刻魔だとわかっている(私はそういう人と待ち合わせをする場合、私も意図的に遅刻していきます笑)

  • 最初に約束をしたタイミングで、Aさんから「前の予定がタイトで、もしかしたら10分くらい遅れる可能性がある」と聞いていた

  • 当日、待ち合わせ時刻までに、理由がなんであれ(寝坊でも、YouTubeを見ていたら夢中になっていたでも、なんでも構わない)、遅れてしまう可能性がある、と聞いていた

という場合であれば、事前に自分の予測を下方修正しておくことができるため、予実差を小さくすることができます。小さなことですが、私としては、こういった小さなことの積み重ねで、この人は信頼できる人だな(予実差があまり大きくないな)と思えるようになっていきます。


信頼できる人には、自分のことも信頼して欲しいと思います。そのために、相手にとって自分の行動の予実差が小さくなるよう、こまめに共有していきます。そうして少しずつ、信頼関係が育まれていくと信じています。



情報共有の重要性を感じるシーンの一例


この章では、実際に働く中で感じたことのある、情報共有が上手い人とそうでない人の差が如実に生まれたシーンを2つほど挙げてみたいと思います。


お客様候補をご紹介した時

日頃から仲良くしている企業Aを、お客様候補として、企業Bにご紹介することがあります。


まず、この時、私の中では「ご紹介した企業Aは、企業Bにとっての顧客候補として適切だったかな」という不安と期待が入り混じった気持ちがあります。そして、「もし適切だったのであればもっとご紹介したい」、「もし不適切だったのであれば改善したい」と思っており、自分のアクションに対する何らかのフィードバックを暗に期待しています。


もちろん、「暗に」ではなく、「面談してどうだったか、また教えてくださいね!」と事前にお伝えしておくケースもありますが、特に忙しい方にご紹介する時は、それも言いづらいことがあり、やはり「暗に」期待していることが多いような気がします。不安な気持ちは、時間が経てば経つほど大きくなるため、早めに解消してもらった方がありがたいものです。


これらを踏まえると、このシーンにおける理想的な情報共有のポイントは、できるだけスピーディに、紹介が適切だったのか、次回に活かせる形で伝えること、になります。


例えば、先日はXさんのご紹介ありがとうございました!昨日お話しまして、会話も盛り上がって、次回PoCの具体的な提案をさせていただけることになりました。先方は最近Yに困っていて、そこにウチのツールがハマりそうで、興味を持っていただけたようです。もし可能であれば、同じようにYに困っている方ご存じであればご紹介いただきたいです!

みたいな共有をもらえると、私としてはとてもやりやすいです。


もちろん、自分のご紹介があまり効果的な出会いにならなかった場合もあります。それはそれで、率直にフィードバックをもらえたら参考になります。

例えば、話しているうちに、ちょっとウチのサービスがハマりそうではないということがわかりました。思うに、YやZのような特徴がないと、ウチのサービスは刺さらないかもしれないと思いました。もしそういった人がいたら、また紹介していただけたら嬉しいです!のようなメッセージをもらえれば、「なるほど、じゃあ今度はYやZっぽい人と話したら紹介してみよう!」となります。



緊急度が中くらいのタスクがある時

次はちょっと応用編で、何か相手にやって欲しいタスクがある時にも、情報共有が上手い人とそうでない人が分かれるような気がします。


例えば、今すぐにやってくれ、というほど緊急ではないが、1〜2週間以内にはやって欲しい、やった方が良い!みたいな絶妙な緊急度合いのタスクがあるとします。(タスクというか、これをやった方がいいですよ、というアドバイスのようなイメージの方が近いです。)


タスクとしてはいろんなパターンが考えられます。例えば、ちょっとした調査や、資料の修正、等があるあるかもしれません。


この時、私から具体的に「金曜日の17時までにやっていただきたいです」と締切日時を指定する場合もありますが、相手の忙しさがわからない状態で、いきなりこちらからピンポイントで日時指定するのはやや憚られる場合もあります。また、命令するような性質のものではなく、相手にとってプラスになると思って伝えたタスクを想定しているため、こちらからピンポイントで日時指定するのも何かおかしい気がする、というのもあります。


そういった場合、依頼(あるいはアドバイス)する側としては、相手から日時をコミットしてもらった方がありがたいものです。例えば、「では、とりあえず今週の金曜日中、を一次締切にしてやってみます!」と言ってもらえると、スムーズに「ではお願いします!」となります。


こういった会話をした時、タスクの大小を問わず、意外と「伝えた側(少なくとも私)は、伝えられた側の想像以上に、ちゃんと覚えて」います。そのため、相手に対して「できるだけ期限内に、アクションを起こすこと」を期待しています。


上手い人は、何かしら期限内に共有があります。当初のコミット通り、期限内にタスクが完了しているパターンがベストではありますが、たとえ完了はしていなくても「70%まではできましたが、ちょっと手こずって、もう1日かかりそうです」のような共有でも良いと思います。この場合、本来は少し早めにその旨を伝えておくのがベターですが、いずれにしても予実差の修正ができるので、共有はありがたいものです。


一方、そのようにならないケースもあります。予実差が特に大きいのは、「やります!」と言って、いつやるかの共有がないまま、アクションもなさそうなパターンです。その場合は、むしろ最初から「やらないです」と言ってもらった方が信頼しやすいかもしれません。あるいは、コミットした期限を平然と超えてしまうパターンです。これは待ち合わせの話と構図がほぼ同じで、期限内に共有がないと、信頼し続けるのが難しくなります。


どういう対応をするのが良いかは、伝える側と伝えられる側の関係性によっても変わる繊細なもので、必ずこうした方が良い、というわけではない点はご留意ください。例えば、上記の場合でも、過去に何度も「しばらく音沙汰はないけど、1ヶ月くらいするととんでもく優れた成果を持ってくる」を繰り返してきた相手であれば、「まあすぐはやらなさそうだけど、伝えとけば近いうちに良い方向に進むきっかけにしてくれそうだな」と事前に予測が立ちます。


結局は、自分が相手から「どういう行動を取ると予測されているか」をメタ認知し、その予実差をできるだけ小さく、あるいはプラスの方向に裏切るように頑張った方が、相手から信頼を得やすい、ということになります。


今回取り上げたのはほんの一例に過ぎず、あらゆるシーンで情報共有は重要です。




仲間づくりか仕組みづくり


一方で、みんながみんな、そういった気遣いが得意というわけではないかもしれません。その場合は、仲間づくりか仕組みづくりをしていく方向を考えるとよいと思います。


まず仲間づくりはシンプルで、「自分より細かく気遣いができる人を仲間にする」ということです。自分にあまりにも時間がない、あるいは、そういったことを失念してしまうことを所与のものとし、常に自分とセットでタスク管理をする仲間に任せる方向性で対策します。


あるいは、共有することを覚えていられないのであれば、共有をオペレーションに組み込む仕組みをつくるとよいと思います。シンプルにカレンダーに入れてリマインドがくるようにしたり、スプレッドシートにまとめておいたり、自分に合う方法を見つけられれば、きっと今後さまざまなシーンで役に立つと思います。また、個別メッセージで情報共有するのが大変であれば、誰もがアクセスできるような場所にメモを残し、そのフォルダ・ファイルへのアクセス権を付与する、みたいなやり方でも、状況によってはワークするかもしれません。



当たり前と言えば当たり前のことなのですが、意外と徹底されていない気がする「情報共有」。ビジネスに限らず、家族や友人とのコミュニケーションでも、共有をすることで相手が悪い気をすることはほぼないと思います。しかも、特別なスキルや知識も不要で、心がけるだけでできます。信頼が信頼を生み、気持ちのいい仲間がどんどん増えていくと、きっとビジネス的な進捗にも良い影響が出るのではないか、と思って書いてみました。


と書きながら自分で読み返していると、待てよ自分もできていない時が結構ある気がする(汗)...、と反省の念に駆られました、これからみんなで頑張っていきましょう!


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